「...あ、痛たたたっ」
さっきまで全然感じなかった痛みが、
気を抜いた瞬間に全身を駆け抜けた。
...結局、僕は何も守ることが出来なかった。
死なせてしまった命と、殺す筈だった命の境が分からなくなって
暴れまわった結果、大切なモノは全部壊れた。
最終的に、何がしたかったのか自分でも全く分からない。
──眠いなぁ...。
これってもしかして、目を閉じた瞬間に
死んでしまうパターンなのではないか?
こんなに死にそうなのに、頭は何故か思考がはっきりしてる。
まぁ、助かったところで僕には何も残っていないし、
やり残したことも無いとは言えないけど、そこまで重要じゃない。
と言うか、ここは何処だろう?
僕が倒れているのは道の真ん中だというのは分かる。
この道を通った人は、かなりびっくりするだろう。
だって、僕が死んで道に転がっているんだから。
そう考えるとかなり可笑しい。
死にそうなのは僕なのに、客観的にも程がある。
ほぼ他人事だ。
──僕の愛しい人...、
僕も、今からそっちに...。
目を閉じた。 未練は、無い。
だが、どうやらカミサマは簡単に
僕を死なせてはくれないみたいだ。
誰かの足音が近づいてくるのが分かる...。
足音が止まって僕が顔をあげると、視線の先に髪の長い...、
──男...?
僕は視力が悪い。
しかもこの雨が降る真夜中の暗闇だ。
性別の見分けと、顔の表情の確認が出来ない。
その人が何か僕に話しかけているが、
雨の音と耳鳴りが酷くて何を言っているのか分からない。
その事に気がついたのか、その人は僕に近づいて、
何故か手を伸ばした。
その時、一瞬だけ、雨が降っているというのに、
その人(彼)を月の光が照らし出した...。
──まるで、僕に、
まだ死ぬのは早いと 言っているかのように。
※はぁ...。
まさかの2人が出会ったところですよ。
自分でも書くとは思っていませんでした。
[5回]
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